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なぜシステム導入は当初の目的通り進まないのか?|DXの現場

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DXコンサルタント記事ノムラシステム式業務効率化

なぜシステム導入は当初の目的通り進まないのか?|DXの現場
  • 話者:飯田 悠紀
  • PMO戦略部 兼 PMOコンサルティング事業部 シニアマネージャー

「DXの現場」では、ノムラシステムコーポレーションの現役コンサルタントが、SAPの導入をはじめ、DXに20年以上携わった経験から、DXにおける失敗しがちなポイントについてご紹介します。

今回のテーマは「経営課題とDX」です。実は大規模なシステムの導入は、当初の想定通り進むことはほとんどありません。

なぜ想定通り進まないのか。そして、外してはいけないポイントについて、システム導入の全体像からお伝えします。

システムを導入することは目的ではありません

弊社は2001年にSAPのサービスパートナーに認定され、以来、数多くの企業様への導入を支援してきました。

社員数136名のうち120名以上がSAPの認定コンサルタントであり、コンサルタント数は144社中17位と日本でもトップクラスです。

しかし、弊社のコンサルティングにおける目的はSAPをはじめとした、システムを導入することではありません。

システムの導入を通して、導入企業様の経営課題を解決することが目的です。

実は、システムの導入は当初想定していた目的からズレてしまうことが少なくありません。

というのも、大規模なシステム、特に基幹システムはヒト・モノ・コストの全てで影響する範囲が大きいため、想定外の対応が数多く必要とされるからです。

例えば現場作業に必要な機能の一部が、新しいシステムの導入によって使い勝手が悪くなるという場合、足りない機能を増築して欲しい!という要望が入ります。

しかし想定外の機能を追加すると、予定していた機能が先送りになったりシステム自体の導入が遅れたりすることもあります。

立ち返って考えてみると、システムを導入したのは経営の課題を解決するためです。にもかかわらず導入過程での変更により、導入時の想定と異なる結果になってしまうことは珍しいことではありません。

だからこそシステムの導入が、本来の目的である経営課題への解決となっているか、常に意識する必要があります。

システム導入後に効果測定は不要か

その一方で長い年月をかけて導入したシステムが、当初設定していた経営課題に対してどのように効果があったのか、測定しているプロジェクトは多くありません。

例えば、システム導入前には「導入には10億円必要ですが、毎年1億円の経費が削減できます」という試算が、経営判断のために実施されたとします。

数年後、システムの導入が完了してしばらくすると、プロジェクトは解散。導入したシステムの管理は保全プログラムへと移行されます。

しかしシステムを導入したことで、当初の経営課題は解決できたのか。先ほどの例であれば、毎月1億円の経費削減は本当に実現できたのか?という追跡が行われることは殆どありません。

当初の目的は経営課題の解決であり、システム導入はその手段でした。

システムの導入によって本当に課題が解決できたのかは、追跡や定期的に評価をしてみないと分かりません。

本当の意味で「経営課題が解決できたのか」を計測するためにも、導入したシステムの効果を測定する必要があると考えています。

プロジェクトを「繰り返す」メリット

ここで一つ疑問が生じるかもしれません。新しいシステムを導入するわけでもないのに、システム導入後に効果を測定して何の意味があるのか、と。

確かに、1つのプロジェクトの完遂で経営課題が解決できれば、導入効果を調査する必要はないかもしれません。

しかし現実には一つの業務システムを導入しただけで、全ての課題が解決することはありません。経営課題を解決するためにも改善を繰り返す必要があります。

効果を測定することは、業務改善の効果を測定するだけでなく、現状を把握して次の課題を明確化することにもつながります。

弊社は、お客様の成長戦略をDXの側面から描いておりますが、業務改善を繰り返すことが前提です。

DXは大きく分けると4つのフェーズで構成されています。

Phase1. 課題整理&計画

Phase2. 業務設計

Phase3. システム設計&構築

Phase4. 運用最適化

このPhase1 〜 Phase4を繰り返すことで、継続的な成長が支援できると考えています。

図1. Phase1 〜 4を細分化したサイクルマップ

「システムに合わせる」ことが現在の潮流

システムの導入前に知っておきたいことは、導入方法における世界の潮流が変わってきていることです。

システムの導入と聞くと、業務に合わせてシステムを選定し、業務に足りない部分は個別開発を進めるというイメージを持たれている方もいらっしゃると思います。

確かに以前は業務にシステムを合わせる「Fit & GAP」が主流でした。具体的にはパッケージシステムを導入し、足りない機能を「アドオン」という追加開発で補うという方法です。

しかしクラウドの性能向上により、現在では「Fit to Standard」という「システムに業務を合わせる」という導入アプローチが主流となっています。

Fit to Standardのメリットは2つあります。

  1. 新しい技術やサービスに合わせてシステムが刷新される
  2. コストや導入期間のパフォーマンス

それぞれについて順に説明します。

1. 新しい技術やサービスに合わせてシステムが刷新される

従来の「Fit & GAP」の一番のデメリットは、システムが時代に取り残されることです。

アドオンを開発することは、その時々では最適解かもしれません。

しかしシステムには定期的なアップデートが発生します。アドオンが存在する場合に必要となるのが、システムとアドオンの連携が問題ないかどうか、という調査です。

アドオンの調査には費用がかかるだけでなく、アップデートが遅延したり、アップデートの阻害となる場合もあります。

例えば、SAPは年間の開発費に7,000億円を計上しています。アップデートができないことでシステムだけが時代に取り残されるだけでなく、新機能の開発の恩恵も受けることができません。

2. コストパフォーマンス

Fit to Standardによりコストや導入期間が大幅に抑えられます。例えば売上1,000億の商社で基幹システムを導入するとします。クラウドを活用した「Fit to Standard」方式で導入すると、「Fit and Gap」方式で導入した場合と比較して、3〜4割程、コストを削減してシステムを導入することができます。もちろん、導入期間も短縮されます。

このように、アップデートのしやすさや、コスト、導入期間のパフォーマンスによって、「Fit to Standard」が世界の潮流となっているのです。

「システムに合わせる」事で生まれる軋轢

ここまでの話だとFit to Standardはいいことばかりに聞こえるかもしれません。しかし、Fit to Standardは現場との軋轢が生じやすい導入方法です。

これまで現場が慣れ親しんだシステムが、新しいシステムの導入によって不便になってしまうと、現場から強い抵抗が出ることもあります。

そのため「経営課題を解決する」という目的がなければ、現場の声によってアドオン開発が優先されてしまい、結果、本来の目的とは異なるシステムが完成します。

このように、Fit to Standardは現場への理解や納得感が強く求められる導入方法です。

だからこそDXを進める際には、現場の意識変革も必要です。

弊社では、DXコンサルタントの腕の見せどころの一つは、現場の納得感だと考えています。

本来の目的の説明を伝えるだけでなく、人材DXとして自走のための教育プログラムも実施することで、現場にも納得していただいた上でシステム導入を進めることが重要です。

「目的の背景」まで理解するための新しい事業部

私は現在、PMOの関連事業部を推進しています。

PMO事業部ではコンサルタントが経営層の方々と直接、経営課題に対して向き合っています。

私自身はこれまで、SAPや他のERPの導入支援に携わってきました。

その際に最も感じていたのは、目的の「背景」が見えにくいということでした。

業務の要件はすでに固まった状態で参画するケースが多い為、業務要件や目的は理解できます。

しかし、そもそもなぜこの業務要件になっているのか?など、経営層が何を考え、なぜこの業務要件にしたのかまでは分かりません。

目的をズラさないためにも、目的に至った背景をもっと深く知りたい、と感じていました。

だからこそ現在PMO事業部では、お客様がシステム導入を決めた目的はもちろん、なぜ課題に感じているのか?他にもどのような課題があるのか?などについて、経営層と一緒に考えることで、本当の目的の背景まで理解しようと努めています。

お客様の課題によってはSAP以外のDXツールを提案することがあるのも、PMO事業部の特徴です。

「システム導入によって経営層の課題をどのように解決していくのか」をお客様と一緒に明確化する。

その課題を解決するために、汗をかいて、手を動かしながら一緒に構築し続けていく。そういったパートナーでありたいと思っています。

まとめ

大規模なシステムの導入は、当初の予定通りに進むことはありません。

しかし変更があったとしても、システム導入当時に設定していた目的に沿ったDXを推進することが弊社の務めだと考えています。

そのためにも課題を背景から理解した上で、どのように解決していくのかを、お客様と一緒に考え続けていきたいですね。

※本記事の内容は2024年4月の取材をもとにしています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。

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