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SAPがサポート終了!2025年(2027年)問題と対応方法を紹介
SAP ERPソリューションは、日本国内でも多くの企業が導入している統合基幹業務システムです。
そのSAP ERPについて、現在ERP6.0 以前のバージョンを利用しているすべての企業が影響を受ける「2025年(2027年)問題」が注目を集めています。
システムの安定稼働やセキュリティリスクに関わるこの2025年(2027年)問題。
適切に対応できるかどうかで、発生するコストや経営上のリスクは大きく変わります。
そこで本記事では、なぜ2025年問題が発生するのか、そしてどのように対処すべきかについて詳しく解説します。
SAPの2025年(2027年)問題とは?|SAP ERP6.0 以前のバージョンの保守サポート期限が終了
2025年問題とは、SAP社が提供するERPソリューションのERP6.0 以前のバージョンの保守サポートが終了することを指します。
日本国内でも多くの企業がSAPを導入しているため、この問題の影響を受ける可能性が高いでしょう。
もともと、SAP社は2025年にERP6.0 以前のバージョンの保守サポートを終了すると発表していましたが、2020年にこの期限を2027年に延長すると発表しました。
そのため、2027年問題とも呼ばれています。
しかし、保守サポート期間が2年間延長されたとはいえ、これが解決策になるわけではありません。
企業は、この期限までに新しいERPソリューションに移行する、拡張保守を適用させる等の対策をとる必要があります。
SAPの2025年問題が発生する原因
なぜSAP社は2025年(2027年)にERPソリューションの保守サポートを終了するのでしょうか。
具体的な原因は以下となります。
- システムの肥大化によるリアルタイム性の欠如
- インメモリデータベース SAP S/4 HANAへ移行する動きが強まっている
それぞれ確認していきましょう。
システムの肥大化によるリアルタイム性の欠如
SAP ERPソリューションは、インターネットの普及とともに統合基幹業務システムとして発展してきました。
その後、システムの設計は統合型から分散型アーキテクチャへと進化しています。
統合型ERPソリューションは、時代の流れに応じて必要な機能や制度対応を継続的に行ってきました。
しかし、旧来の機能との互換性を保ちながらのアップデートを繰り返すうちに、システムが肥大化・複雑化し、要求されるリアルタイム性(データが更新されると即座に参照や分析が可能な機能)の実現が困難になったのです。
このような「リアルタイム性の欠如」がサポート終了の要因となりました。
インメモリデータベース SAP S/4 HANAへ移行する動きが強まっている
リアルタイムで高速処理を実現できるインメモリデータベースとしてS/4 HANAが登場したことも、ERPソリューションの保守サポートが終了する要因です。
S/4 HANAは、遅延がほぼゼロで大量のデータを分析・処理する能力を持っています。
現在市場に出回っている他のデータベース管理システムと比べても、高速な検索・統合が可能であり、多様なデータに対して迅速に対応できるのが特徴です。
S/4 HANAへ移行することで、企業は真のデータ主導型経営への変革が期待されています。
SAP2025年(2027年)問題の対応策|S/4 HANA への移行を推奨
次に、SAP2025年問題の対応策として、以下の方法を解説します。
- 【推奨】S/4 HANA に移行する
- 拡張保守により2030年まで使い続ける
- 顧客個別保守を活用する
【推奨】S/4 HANA に移行する
S/4 HANAは、2025年以降も保守サポートを継続して受けることができます。
インメモリデータベースを採用しているため、膨大なデータを高速に処理することが可能です。
その結果、従来のERPソリューションと比較してパフォーマンスが大幅に向上するでしょう。
移行の際には、システムのスリム化や、S/4 HANAを基盤としたポストモダンERPの実現を検討することも重要です。
拡張保守により2030年まで使い続ける
ERPソリューションの拡張保守により、2030年まで使い続けることも可能です。
この方法には、S/4 HANA移行中に発生する可能性のあるSAPの方針変更に伴うリスクを回避できるというメリットがあります。
ただし、拡張保守は2030年に終了するため、一時的な延命措置に過ぎない点には注意が必要です。
顧客個別保守を活用する
顧客個別保守とは、保守サポートの期限が切れた製品に対して、顧客ごとに保守サービスを提供するものです。
このサービスを利用すれば、半永久的に保守サービスを受け続けることができます。
しかし、このサービスには以下のデメリットがあります。
- 保守費用が高額になる可能性がある
- 技術的な更新が保証されない
- 法改正変更へ対応するためのアップデートが提供されない
これらのデメリットにより、リスクの増大や収益性の悪化が懸念されるため、顧客個別保守サービスの利用は推奨できません。
S/4 HANAへ移行するメリット
S/4 HANAへ移行することで、ビジネスのスピードと効率が飛躍的に向上し、競争力を大幅に強化することが期待できます。
インメモリデータベースによる高速処理 | S/4 HANAのインメモリデータベースを活用することで、データ処理が瞬時に行われ、ゼロレスポンスタイムを実現。これにより、従来のERPソリューションでは体感できなかった速度で業務を進めることが可能。 |
情報調達速度の向上 | 従来のERPソリューションでは、経営戦略の立案や市場分析のために個別にデータウェアハウスを用意する必要があった。しかし、S/4 HANAでは同一プラットフォーム上で必要なデータを即時に調達できるため、経営判断に必要な情報を迅速に用意できる。これにより、迅速な意思決定が可能になる。 |
S/4 HANAへの移行方法
S/4 HANAへの移行方法は以下のとおりです。
- SAP ERPをそのままS/4 HANAに移行する
- 再構築する
具体的な移行手法についてはSAP公式コミュニティでも解説されています。
参考:SAP S/4HANAへの移行基礎知識:第2回 移行オプションの選択とプロジェクトの進め方を知ろう
SAP ERPをそのままS/4 HANAに移行する
SAP ERPをそのままS/4 HANAに移行する方法です。
この方法のメリットは、既存のアドオンやデータをそのまま利用できるため、移行期間やコストを抑えることができる点です。
一方でデメリットとしては、データ移行の際に数日間のダウンタイムが発生する可能性があることが挙げられます。
再構築する
再構築とは、完全に新しいデータや基盤を作成し、それを運用する方法です。
この方法のメリットには、最新の技術を取り入れてプロセスを簡略化できることや、ダウンタイムを排除することで時間的な制約を受けずに運用できることが含まれます。
一方で、再構築には高い技術力が必要であり、特にSAPに関する専門知識が求められます。
そのため、エンジニアを雇うための費用や外注する費用が発生するデメリットもあります。
SAP2025問題に起因した移行トラブル事例
SAPの移行は非常に難易度が高く、トラブルが発生しやすいものです。
日本を代表する食品企業でも、SAP移行中にトラブルが発生し、数か月間にわたって出荷が停止する事態が起こったことがあります。
そのため、費用や期間は当初の予定よりもかかることを前提に見込んでおくことが大切です。
SAP2025年(2027年)問題をS/4 HANAへの移行で対応しよう
SAP ERPソリューションを利用している企業にとって、2025年の保守サポート終了は避けられない課題です。
対応が遅れると、トラブルによる業務停止のリスクも懸念されます。
この問題に対処するためには、余裕を持ったスケジュールで計画を立て、S/4 HANAへの移行を検討することが重要です。
ノムラシステムコーポレーションでは、S/4 HANAへの移行に関するご相談を承っております。
どうぞお気軽にお問い合わせください。