コンサルタント記事

経営課題を「本質」に近づけるには?|DXの現場

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経営課題を「本質」に近づけるには?|DXの現場
  • 話者:飯田 悠紀
  • PMO戦略部 兼 PMOコンサルティング事業部 シニアマネージャー

「DXの現場」では、ノムラシステムコーポレーションの現役コンサルタントが、SAPの導入をはじめ、DXに20年以上携わった経験から、DXで重要となるポイントについてご紹介します。

今回のテーマは「経営課題とDX」です。企業によって経営課題の捉え方は異なります。しかし一方で、お話を伺うことで複数の課題に共通する、より「本質的な」課題を発見できることがあります。

本記事では、どのような形で課題の本質を発見したのか?そして、実際に解決した事例をご紹介します。

経営課題の捉え方は組織によって大きく異なる

まずDXとは、SAPをはじめとしたシステムで業務を改善することではありません。DXで重要な点は、経営課題を解決することであり、システムの導入はあくまでも手段です。

つまり「自社の経営課題が何であるのか」を明確にし、それを解決することがDXと言えます。だからこそ「何が課題なのか」を明確化することがDXには重要です。

これまで数多くの経営層の方とお話をしてきましたが、企業によって経営課題の理解や捉え方は千差万別です。

会社規模によっても異なりますが例えば経営委員会を設置し、組織全体で課題に取り組む体制を構築している企業もあれば、経営者や役員の方々が課題をそれぞれ個別に捉えているケースもあります。

組織で取り組まれている課題でも深堀りできる

組織全体で課題に取り組む体制を構築している企業では、経営委員会や取締役会などが経営課題や打つべき施策を社内で議論しています。

しかし、すでに課題が見えている場合でも、さらに深掘りしてみると、複数の課題に共通する「より本質的な課題」が浮き彫りになる場合があります。

課題は別のところに:会計システムのコストダウン例

課題を深掘りすることで、より本質的な課題が見えてきます。

例えばある企業では、会計システムのコストダウンが課題でした。

会計を複数のシステムで処理し、それぞれのシステムごとに担当者も異なっていました。M&Aによって成長を加速させてきた経緯があるため、合併した会社ごとに異なるシステムを用いていたためです。

この場合、表面的にはシステムのコストダウンが課題ですが、本社と子会社を含めた社内の経理体制の最適化がより本質的な課題です。

つまりコストダウンの解決策を探すのではなく、本社をホールディングス化し、経理をはじめとした管理業務系を一本化することこそが解決策になるということです。

 (※ 会計に関しては法律の規制もあるため、企業によって解決策は異なります。)

経営課題のタネを見つけるには?

一方、課題に対して「明確化はできていないけれども、改善はできるはずだ」と感じている方もいらっしゃいます。

この場合、私たちの過去の知見や経験を共有することで、「ここが課題かもしれない」という気づきが生じることも少なくありません。私たちはその気づきがすごく重要だと感じています。

次の事例も、最初はプロジェクトに対して誰のアサインが適切か?という小さな課題でした。

小さな課題が、経営課題の元になっていることもある

課題が不明瞭だったり、すごく小さな課題であったりしても、本質的な経営課題が見えてくることがあります。

以前、社内のプロジェクトメンバーをどのような基準でアサインすればいいかわからない、と悩まれているお客様がいらっしゃいました。

詳しくお話を伺うと、アサインが適切かどうか自信が持てない原因の一つは、社員のスキルが十分に把握できていなかったことでした。

ここで解決策として思いつくのは保有資格などをベースとしたスキルの可視化です。

ですので、もう一歩踏み込むと「可視化したいスキル」とは、企業が社員に「そうあって欲しい理想像」とも考えられるわけです。

そのため今回の事例では、企業が社員にどう成長して欲しいのか?という育成方針や、方針に沿った査定基準を見直すこととなりました。

このように小さな課題からでも、本質的な経営課題が見えてくることがあります。

(※ なお本事例では私たちは専門外であるため、人事に詳しい企業を紹介し、対応を進めました。)

関連記事:人事DXとは?メリットや導入の流れを解説

本質的な経営課題にアプローチするためには

本質的な課題にアプローチするために、私たちは「徹底的にお話を伺うこと」が重要だと考えています。

コンサルタントのイメージとして「こうすれば良いでしょう」と一方的に提案するイメージがあるかもしれません。

しかし実際は、今現在お客様が抱えている課題やお考えをじっくりと伺うことではじめて、本質的な課題の探求が行えると考えています。

業務DXが進むと起こる変化とは?

ここまでは本質的な経営課題へのアプローチが重要だとお伝えしてまいりましたが、実際の課題解決例もお見せできればと思います。

  • 決算処理を2ヶ月から4日に
  • 債務支払プロセスの簡略化になる

事例1. 複数データの処理を一元化、決算処理を2ヶ月から4日に

こちらはある企業にSAPを導入した事例です。

SAP導入前は各部署でデータを作成・統合していたため、決算処理に2ヶ月かかっていました。

しかし、SAPを導入することでデータを一箇所にまとめることができ、複雑だった流れがシンプルに。決算処理も4営業日で完了するようになりました。

SAPの導入がきっかけで社内ルールの見直しも必要となり、全社で期日を変更。その期日までに入力を完了させる体制も構築できました。

事例2. 債務支払プロセスを簡略化

こちらもSAPの導入がフィットしたケースです。

システムの導入前、ある企業では仕入れ先への支払プロセスがバラバラで担当者ごとに異なる方法で処理していました。手間がかかるだけでなく、チェックすべきポイントも多く、ミスも発生しやすい状況でした。

しかしSAPを用いることで、複雑だった支払いプロセスは2〜3つにまとめられ、業務が大幅に簡略化されました。

その結果、以前は5人必要だった業務量が2 人でこなせるようになり、よりコア業務に集中できるようになりました。

このようにシステムを導入することで、当初設定していた経営課題を解決できるだけでなく、データが一元化できたことにより、データドリブン経営に舵を切ることもできました。

関連記事:DXのメリットとは?推進に向けた課題や成功のポイントをわかりやすく解説

データ可視化の効果とデータドリブン経営

私の個人的な意見ですが、データは可能な限り可視化した方が良いと考えています。

例えば「コストを下げたい」という課題の場合でも、「コスト」には人件費や設備費、原料費など含まれる要素はさまざまです。

どの費用をどのくらい削減するべきかが明確でない場合でも、データを可視化することで、具体的な削減のポイントが見えてきます。

データの可視化は、経営者の考えを次世代に引き継ぐ際にも有効です。経営者が重視しているポイントをデータ化することで、経営者の判断材料がより明確になるためです。

データがあるからこそ、経営者の意思決定を理解しやすくなり、意思の引き継ぎも可能になると考えています。

データ可視化によるメリットは他にもあります。

  • 判断材料が増え、経営の解像度が上がる
  • データを共有すると、組織全体が共有の理解が得られる
  • どの数字を改善すべきかが明確になり、経営判断がしやすくなる

データの可視化は、経営課題の解決にも不可欠な要素であり、組織の効率化と透明性の向上に貢献します。だからこそ、業務DXを進めることで、データドリブン経営の実現を後押ししたいと考えています。

まとめ:より本質的な経営課題にアプローチするために

すでに課題が明確化されている場合でも、詳しくお話を伺うことで、さらに本質的な課題の発見につながることがあります。

違和感レベルであったとしても、お話を伺ったうえで、私たちの経験や知見を共有することで、経営課題の発見につながることも少なくありません。

経営課題に対して、もっと本質的なアプローチがあるのではないか?と思われた場合は、情報収集でも構いませんので、お気軽にご連絡ください。

またこちらの資料も課題のタネの発見に一役かっております。ぜひ社内DXの推進にお役立てください。

※本記事の内容は2024年5月の取材をもとにしています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。

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