DX

自治体情報システムの標準化とは?メリットや移行手順をわかりやすく解説

SHARE
Digital Library Digital Library Digital Library Digital Library

自治体情報システムの標準化とは?メリットや移行手順をわかりやすく解説

自治体情報システム標準化とは、日本全国にある1,700前後の自治体で実施されている住民基本台帳や国民年金などの業務を、標準化されたシステムに移行する取り組みです。

全国の自治体で用いられるシステムを標準化することで、自治体業務の効率化が進み、コストカットにつながるだけでなく住民の利便性向上も期待できます。

そこで今回は、自治体情報システムのメリットや移行手順について詳しく解説します。

自治体情報システムとは?デジタル庁や総務省など国が掲げるDX推進施策の1つ

自治体情報システムの標準化は、デジタル庁や総務省が進めるDX推進策の1つであり、自治体が優先的に取り組むべき課題です。

この標準化の取り組みは、住民サービスに直結する20の業務を国が示す標準仕様に基づいたシステムへ移行するものです。

これにより、自治体ごとに異なっていた基幹システムを統一し、業務フローのばらつきを解消することで効率的な運用が可能になります。

さらに、システムの保守や運用にかかるコストが削減されることが期待されています。

独自仕様のシステムを維持する必要がなくなるため、システム開発やメンテナンスにかかる費用を抑えられる点が大きなメリットです。

2026年3月末までにこの移行を完了することが求められており、自治体業務の生産性向上や、住民サービスの向上が期待されています。

自治体情報システムを標準化するメリット

自治体情報システムを標準化するメリット

自治体情報システムを標準化するメリットは以下の3つです。

  • 地方公共団体におけるデジタル基盤の整備
  • 競争環境の確保とベンダーロックインの回避
  • 迅速で柔軟なシステムの構築

それぞれ解説します。

地方公共団体におけるデジタル基盤の整備

自治体情報システムの標準化により、地方公共団体のデジタル基盤が強化され、システム間のデータ連携が円滑になり、行政サービスのクラウド化が実現可能です。

その結果、各部署やシステムごとに分散していたデータがクラウド上で統合・連携されることで、情報共有がスムーズになり、手続きの遅延が解消され、効率的かつ効果的に行政サービスを提供できるようになります。

結果として、住民の利便性も大きく向上するでしょう。

さらに、自治体の業務に「デジタル3原則」に基づいたフローを導入することで、業務改革も進むため、迅速な手続き対応が可能になります。

デジタル3原則とは、以下のとおりです。

  • デジタルファースト:行政手続きは原則すべてオンラインで完結させ、住民が書類の提出や窓口での対応にかかる負担を大幅に軽減させる
  • ワンスオンリー:住民が同じ情報を何度も提出する必要がなく、一度提出した情報は複数の手続きで共有され、無駄な手間が削減される。
  • コネクテッド・ワンストップ:民間サービスや複数の行政手続きを1つの窓口で完結できる仕組みを整え、住民の手続きがより簡便になる

自治体情報システムの標準化が進むことで、住民は手続きの回数や各機関への来訪回数を大幅に減らすことができ、オンラインでの手続き完結が可能になります。

手間が減るだけでなく、迅速で使いやすい行政サービスが提供されるため、住民にとっての利便性が飛躍的に向上するでしょう。

競争環境の確保とベンダーロックインの回避

自治体情報システムの標準化を進める際に、自治体がRFP(提案依頼書)を通じて複数の事業者に提案を求めるプロセスを導入すれば、各事業者の技術力やコストパフォーマンスを比較できるようになります。

その結果、競争環境が整うため、システムの品質向上やコスト削減といったメリットも期待できるでしょう。

さらに、システムの仕様が標準化されることで、特定の担当者やベンダーに依存せず、他の業者への移行も容易に行えるようになります。

これにより、 特定業者への過度な依存や癒着を避け、公平性と透明性も確保されます。

また、標準化の整備の際に、セキュリティポリシーの統一や政府が定める高いセキュリティ基準に準拠することで、住民の個人情報を扱うような秘匿性の高い業務でもコストを抑えつつ、安全性の高いサービスを提供できます。

このように、サービス間の競争が促進されることで経済的なメリットが生まれ、持続可能な運営が可能となることが期待できるのです。

迅速で柔軟なシステムの構築

自治体業務は、法改正や突発的な行政需要に迅速に対応する必要があります。

そのためには、モダンアプリケーションアーキテクチャを採用し、柔軟で迅速に対応できるシステムの構築が求められます。

たとえ地方自治体が独自のシステムや、標準化されていない機能を持っているシステムを使っていたとしても、標準化されたシステムと結びつける形で構築することで、既存のシステムともスムーズに連携できるようになります。

これにより、法改正や新しい行政需要にも即応できる柔軟な体制を確立できるでしょう。

システム標準化の対象となる業務は?20業務が対象

自治体情報システムの標準化対象となる業務は以下の20業務が対象です。

  1. 住民基本台帳:氏名・生年月日・住所などに関わる業務
  2.  国民年金:日本在住の20歳以上60歳未満の住民が加入する公的年金に関わる業務
  3.  選挙人名簿管理:選挙資格を持つ住民の名簿に関する業務
  4.  固定資産税:土地・家屋・償却資産の固定資産税に関する業務
  5.  個人住民税:住民に対する行政サービスにかかる税金に関する業務
  6.  法人住民税:法人に対する行政サービスにかかる税金に関わる業務
  7.  軽自動車税:軽自動車の所有者に課せられる税金に関わる業務
  8.  国民健康保険:国民健康保険に関する業務
  9.  障害者福祉:障害者総合支援法に基づく業務
  10.  後期高齢者医療:後期高齢者医療制度に基づく業務
  11.  介護保険:介護保険制度に基づく業務
  12.  児童手当:児童手当制度に基づく業務
  13.  児童扶養手当:児童扶養手当に関する業務
  14.  子ども・子育て支援:子ども子育て支援制度に基づく業務
  15.  生活保護:生活保護に関する業務
  16.  健康管理:住民の健康管理に関わる保健事業に関する業務
  17.  就学:児童・生徒の学齢簿や就学援助の申請・給付に関する業務
  18.  戸籍:戸籍の管理業務
  19.  戸籍附票:戸籍作成以後の住民票変遷情報を管理する業務
  20.  印鑑登録:印鑑による本人証明制度に基づく情報管理業務

自治体情報システム標準化の期限は?2025年度末が目標

政府は、自治体情報システムを2025年度末までにガバメントクラウドを活用した標準準拠システムへ移行することを課題目標としています。

2023年4月から2026年3月までの間は「移行支援期間」とされ、この期間中に自治体が円滑に移行できるよう、政府からの支援が提供されます。

ガバメントクラウドの整備と提供も2025年度末までを目処に進められており、自治体は迅速にシステム運用が可能となる見込みです。

自治体情報システムを移行する手順

自治体情報システムを移行する手順について確認しましょう。

手順は以下のとおりです。

  • 【STEP1】ガバメントクラウド移行計画
  • 【STEP2】予算要求・調達
  • 【STEP3】ガバメントクラウド利用開始

それぞれの手順について解説します。

【STEP1】ガバメントクラウド移行計画

自治体はまず、既存システムをガバメントクラウドへ移行する際のスケジュール課題を把握することが重要です。

デジタル庁や総務省と連携し、プロバイダー選定や移行のタイムライン、リソースの確保を計画的に進めていきましょう。

移行作業では、既存のデータが失われるリスクやネットワーク帯域の制約により作業が遅延する可能性があります。

こうしたリスクに備え、事前にデータのバックアップを取ることや、プロバイダーと協力してリハーサルを行うことが推奨されます。

また、移行の進捗状況を継続的にモニタリングし、必要に応じてスケジュールやリソース配分の見直しを行うことが、円滑な移行につながります。

【STEP2】予算要求・調達

自治体情報システムの標準化においては、移行にかかるイニシャルコストやランニングコストを明確に把握しておくことが大切です。

移行計画に関わる費用の一例として、以下が挙げられます。

カテゴリ項目説明
イニシャルコスト移行中のクラウドサービス利用料ガバメントクラウド移行中にかかるクラウドサービス利用料
移行中の回線利用料ガバメントクラウド移行中にかかるガバメントクラウドと各地方公共団体、出先機関等のネットワークをつなぐ回線にかかる利用料
庁内ネットワーク設定費用地方公共団体からガバメントクラウドへの通信経路設定やルータ等へのルーティング設定等、庁内ネットワーク機器に関する費用
移行作業にかかる経費ガバメントクラウド構築や移行にかかる業務委託費用
ランニングコスト移行後のクラウドサービス利用料ガバメントクラウドで利用する各CSPサービスの利用料
移行後の回線利用料ガバメントックラウドと各地方公共団体のネットワークをつなぐ回線にかかる利用料
ガバメントクラウド運用管理補助者および回線運用管理補助者との運用管理補助委託料ガバメントクラウド運用管理補助者および回線運用管理補助者に支払う運用管理補助委託料
アプリケーション等利用料・保守料ガバメントクラウドに実装するASPに支払う利用料・保守料

出典:移行計画に関わる見積もり項目一覧

クラウドサービスの移行に伴う利用料や回線の利用料については、各ベンダーと協議して、正確な見積もりを取得しましょう。

また、予算要求の準備や提出に際しては、移行計画と予算が一致しているか、計上漏れや不要な項目が含まれていないかを事前に確認することが重要です。

ベンダーの選定については、RFP(提案依頼書)の実施や提案内容の評価を行い、ガバメントクラウドの運用管理補助者や回線運用管理補助者との契約を進めるようにしましょう。

【STEP3】ガバメントクラウド利用開始

ガバメントクラウドの利用を開始する前に、環境のセットアップ、ユーザーアカウント管理、ネットワーク構築、セキュリティ設定などの準備を行う必要があります。

これらの準備が完了した後、移行計画に従い、慎重に移行作業を進めます。

遅延を防ぐために、現行システムの提供事業者と調整を行い、可能な限りデータ移行や準備作業を前倒しで進めましょう。

移行作業では、以下の点に特に注意が必要です。

これらの対応を事前に準備し、必要に応じてバックアップを取ることで、移行中のトラブルを最小限に抑えることができます。

  • 移行後システムに移行できないデータの取り扱い
  • データの統合および分割の処理
  • 現行システムで保持していないが、移行先で必要となるデータ項目の管理
  • 履歴の管理方法が異なるデータ項目の調整
  • 必須データの欠損や誤りの修正
  • 項目桁数の差異があるデータの管理
  • 文字データの変換作業

クラウド環境への移行が完了した後は、システムのパフォーマンスチェックやユーザー受入テストを実施し、最終的な調整を行います。

特に、他の業務システムとの連携がある場合は、データの連携項目やファイル形式、処理タイミングを確認することが重要です。

自治体情報システム標準化に向けたERP導入

自治体情報システム標準化に向けた取り組みでは、ERPの導入が非常に有効です。

ERPは、業務プロセスを一元管理し、予算管理や市民サービスの提供を効率化します。

その結果、自治体の運営は透明性と効率性が向上し、全体の業務の質が高まるでしょう。

特に、SAPの官公庁向けERPは、自治体の特有のニーズに合わせたカスタマイズが可能です。

また、最新のクラウド技術を活用した強固なセキュリティ対策により、コンプライアンスを遵守しつつ安全な運用を実現します。

例えば、SAPのERPソリューションは、リアルタイムでデータを活用できる点が強みで、予算管理や補助金の支給、市民サービスの改善に貢献します。

すでに多くの自治体や官公庁で導入されており、その実績からも信頼性が高く、業務効率化と市民サービス向上を目指す自治体におすすめの選択肢です。

ノムラシステムでは、SAP導入のコンサルティングを行っております。

SAPの導入を検討している場合は、お気軽にご相談ください。

自治体情報システム標準化で業務を効率化しよう

自治体情報システムの標準化は、業務の効率化とコスト削減を目的とした取り組みです。

全国の自治体で使用されている基幹システムを統一し、業務フローのばらつきを解消することで、住民サービスの向上も期待されています。

しかし、新しいシステムを導入する際、適切なシステム設計やプロジェクト管理が不十分だと、システム移行の遅延や費用の膨張といった課題が発生することがあります。

そのため、経験豊富な人材を抱えるコンサルティングサービスを活用し、このような課題を回避して自治体情報システム標準化をスムーズに進めると良いでしょう。

ノムラシステムは、業界屈指のSAP社認定コンサルタントを擁し、企画から運用までワンストップでサポートを提供します。

各プロジェクトの経験から得たノウハウを用いて、迅速かつ効果的なERP導入をサポートし、自治体業務の効率化を実現します。

また、システム移行に伴うデータの管理やセキュリティの確保に関しても、ノムラシステムは政府のセキュリティ基準を満たす対応を行い、運用後も定期的なヒアリングやアセスメントを通じてシステムの最適化を支援します。

まずはお気軽にご相談ください。


お問い合わせはこちら










    ※記入項目はお間違いのないようご注意ください

    SHARE
    Digital Library Digital Library Digital Library Digital Library
    お問い合わせ