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自治体DXが進まない5つの理由とは?DX推進のポイントと先進事例も紹介
国の政策として「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」が策定され、地方自治体のDX推進に力が入れられています。
しかし、まだまだDX推進が進まないと悩んでいる地方自治体は少なくありません。
本記事では、自治体のDXが進まない原因とDXの成功事例を紹介します。
自治体DXが進まない5つの理由
自治体でDXが進まない理由は以下の5つです。
- 予算が確保できない
- DX人材が不足している
- 既存の業務で手一杯になっている
- アナログ文化が根強く残っている
- 業務を変えることに対して現場の抵抗感が強い
予算が確保できない
総務省の実施した「デジタル専門人材の確保に係るアンケート」(2020)によると、DX推進の課題において都道府県・市区町村ともに「財源の確保」の回答数が1番多いと公表されています。
自治体の規模でデジタル技術を使って行政サービス改善を図るためには、多くの財源を確保しなければ進められません。
予算管理する自治体の責任者や、税金を納めている国民の理解を得る必要があるため、自治体のDX化はまだまだ進んでいない状況です。
DX人材が不足している
DXが進まない課題の1つに、自治体内でDXに詳しい人材の不足があげられています。
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、IT人材の不足数は2030年には最大約79万人にまで広がると公表されました。
民間企業でもIT人材が不足しているため、自治体がDX推進プロジェクトを進められる人材の確保が難しい状況です。
自治体内で専門知識を身につけるにも時間がかかるため、DX化が進まない原因につながっています。
既存の業務で手一杯になっている
自治体のDXが進まない理由のひとつは、人手不足により既存業務しかできない環境であることです。
DXを進める間も、行政に関する既存業務が滞らないように処理しなければいけません。
使える時間が限られているため、DX推進が進まない要因につながっています。
人手不足の環境だと既存業務の負担も大きくなるため、DX推進に取り組む時間は取れないでしょう。
既存業務で手一杯になっている状況から、DXの取り組みが後回しになっています。
アナログ文化が根強く残っている
自治体のDX推進の妨げになっているのが、紙を使った業務が数多く残っていることです。
自治体のDXを推進する上で、デジタル化という手段が大きな割合を占めます。
自治体内で行われている作業をできる限りパソコン上で扱えるようにしなければいけません。
しかし、紙運用を始めとしたアナログ文化が定着しており、慣れないデジタル化作業への変更に抵抗感を示す職員もいるでしょう。
環境を変化させることが難しい自治体は、DX推進に苦戦しやすくなります。
業務を変えることに対して現場の抵抗感が強い
DX推進による業務フローの変更に対して、現場の抵抗感が強いことも理由のひとつです。
行政の仕事には正確性が強く求められます。
市民が受付する各手続きでミスが発生すると大きな影響を与え、世間に公表される可能性もあるでしょう。
そのため、現状の正確に処理できている仕事のフローを変更し、DXを進めることに抵抗感を持っている職員もいます。
現場で働く職員の理解を得ることも、自治体でDX推進を進めるためには大切です。
関連記事:地方自治体におけるDX推進|デジタル変革で地域活性化を目指す方法
自治体DX推進の3つのポイント
自治体のDXを推進するためのポイントは以下の3つです。
- DX推進できる体制を整える
- 民間の事業者を活用して人材を確保・育成する
- 現状業務の課題を整理する
DX推進のポイントを順番に解説します。
DXを推進できる体制を整える
自治体の規模でDX推進を行うには、組織的に体制を整えることが大切です。
DX推進できる体制を整えるためのポイントは、以下の3つです。
- 自治体全体で取り組む必要がある
- 他の自治体と連携する
- 職員のDXに取り組む意識を向上させる
DXは自治体で推進しなければ、予算も確保できず取り組みは活性化されません。
さらに、自治体内部の体制整備と、DX推進を進めている外部の自治体との連携体制の両方が必要となります。
民間の事業者を活用して人材を確保・育成する
自治体にはDXやデジタル化に詳しい人材がまだまだ不足している状況です。
そのため、自治体では民間の事業者を活用した人材の確保・育成が進められています。
人材を確保するための方法は、以下の2つです。
- 民間人材サービスを利用して人材を確保する。
- 外部のコンサルティングを利用して内部の課題を整理する。
自治体内からDX推進に取り組むメンバーを選出し、専門知識を持った人材との交流を続ければ、自治体内の人材育成につながります。
現行業務の課題を整理する
DX推進によって業務改善するためには、現行業務の課題を整理する必要があります。
課題を整理する際は、現行業務をコア業務(利益に直結する業務)とノンコア業務(直接的に利益を生まない業務)に分けて、ノンコア業務に自動化できるところがないかを探すのがポイントです。
また、DX化の一環としてDX推進で蓄積しデータ分析を続けると、さらなる改善につなげられます。
自治体内で整理が難しければ、外部の伴走型コンサルティングを利用できるとスムーズに課題整理が進められます。
伴走型コンサルティングについては以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
自治体DX推進の先進事例集
自治体によるDX推進の先進事例集として、以下の3つを紹介します。
- 体制整備の事例|県市町DX推進会議の設置
- DX人材確保の事例|DX人材シェアリング事業
- DX導入事例|児童相談業務のAI活用
自治体のDX推進の進め方について参考にしてみてください。
体制整備の事例|県市町DX推進会議の設置
愛媛県では、県と20市町が協働してDX推進に取り組むことを宣言して「愛媛県・市町DX推進会議」を設置・運営しました。
県と県内市町が連携して意見交換・セミナーなどのDX推進を活発に行い、自治体職員のDX推進に対する意識向上に成功しています。
協働して取り組む内容は、以下のとおりです。
- デジタルリテラシーの向上
- 専門知識を持つ人材のシェアリング
- システムの標準化・共同化・クラウド化の推進
組織として、本格的に自治体のDX推進に取り組み始めた事例です。
DX人材確保の事例|DX人材シェアリング事業
大阪府では令和5年度から「デジタル人材シェアリング事業」を実施しています。
外部からデジタル人材を共同で確保し、DX推進を希望する市町村へ専門的な支援を行うという政策です。
令和5年度では大阪府から13市町村が参画し、7月より順次実施しています。
予定されている主な支援内容は以下のとおりです。
- 公務員基礎能力向上・サービスデザイン思考支援
- 行政手続のオンライン化支援
- DX推進計画実行等支援
行政主導で外部からDX人材確保に向けた取り組みを始めた事例として、事業の結果が期待されています。
DX導入事例|児童相談業務のAI活用
江戸川区では、児童相談業務にAI技術を導入し、以下の業務効率化を図りました。
- 通話音声をリアルタイムでテキスト化
- 通話内容に応じてマニュアルを即時参照できる
- スーパーバイザーがすぐに支援できる体制の構築
システム導入により通話記録にかかる職員の業務負担を軽減することに成功。
経験年数によるサービスのばらつきもおさえられ、正確な支援を案内できるようになりました。
今後の展望として、⼀時保護や家庭復帰に⾄るノウハウをビッグデータとして蓄積し、AIを活用した通告時の虐待リスク評価を予測判断するシステムの構築を目指しています。
まとめ
自治体のDXが進まない理由には、大きく3つの理由があります。
- 予算が確保できない
- 人材不足でDX推進に取り組めない
- 業務フローを変更することによる抵抗感
DXを推進するためには、自治体内で解決しなければいけない課題が多く残されています。
しかし、自治体によるDX推進事例が少しずつ増えてきたことで、課題の解決方法もわかるようになりました。
共有されている事例を参考に、外部からコンサルタントの協力も得ながら自治体のDX推進を進めていきましょう。
DX推進のために伴走型コンサルティングを利用する際は、弊社までお問い合わせください。