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業務標準化を成功させるには|効率化と品質向上の方法を事例から学ぶ
業務の効率化や品質の向上を目指す際に、検討すべきは業務の「標準化」です。
本記事では、業務標準化の基本やメリット、注意点と進め方を紹介します。
さらには、標準化の取り組み事例まで詳しく解説します。
業務標準化の意味や手順を学び、業務プロセスの改善につなげましょう。
業務標準化とは
業務標準化とは、業務の作業手順やルールを決めることで、誰でも同じ品質と効率で仕事ができるようにするための取り組みを指します。
業務標準化の目的
業務標準化の目的は、業務の効率化と品質の向上を実現することです。
同じ作業でも作業者が変わると完成度にばらつきが生じてしまいます。
しかし、定められた手順やマニュアルがあれば、誰が作業をしても一定の完成度を保てるようになり、生産性の向上やミスの減少につながるでしょう。
業務標準化は、組織全体のパフォーマンスを底上げするうえで重要な手段といえます。
業務標準化のメリット3つ
業務標準化を進めることで得られる主なメリットを3つ紹介します。
生産性の向上
作業手順を標準化することで、誰が担当しても同じ方法を取れるようになり、時間の浪費やミスを抑えられます。
業務標準化により、以下のような生産性向上が期待できます。
- 書類をテンプレート化し、作業量を削減する
- あいまいな作業手順をマニュアル化し、業務を効率化する
- 業務フローを可視化し、余計なコミュニケーションコストや重複作業をなくす
業務の効率的な進め方が明確化されるため、業務のスピードも向上するでしょう。
業務品質の向上
標準化された手順を踏むことで、作業者によるやり方のばらつきを防ぎ、安定した品質を保てます。
たとえば、製造業であれば、決まった手順通りに部品を組み立て検査を行うことで、常に同じ品質の製品を提供できます。
サービス業においても、マニュアルをもとに対応することにより、一定レベルの接客品質を確保できるでしょう。
属人化の防止
属人化とは、特定の個人のノウハウやスキルに業務が依存し、その人がいないと仕事が回らなくなる状態を指します。
業務標準化によって手順が共有されていれば、担当者が休暇などで不在の場合でも、ほかのメンバーが業務を引き継ぐことができます。
さらに、業務のローテーション制度などを組み合わせることで、複数の従業員が多様な業務をこなせるようになり、組織全体のスキルが底上げされるでしょう。
関連記事:業務属人化の解消方法、解消するメリットや解消に役立つツールを解説
業務標準化のデメリットと注意点
業務を標準化する際のデメリットは、手順書の作成やツール導入などでコストが発生するため、一時的に現場へ負担がかかりやすいことです。
そのため、実施計画を綿密に立て、段階的に進めることが望ましいでしょう。
また、属人性が高い仕事では、標準化によって専門性が発揮しづらくなったり、業務へのモチベーションが低下したりすることが懸念されます。
標準化を進める際は、従業員のスキルや個性を活かせる仕組み作りも合わせて検討することが大切です。
業務標準化の進め方を5つの手順で解説
ここからは、標準化の進め方を以下の5つの手順で解説します。
- 現状を把握する
- 業務フローを可視化する
- マニュアルを作成する
- 定型業務の自動化を検討する
- 定期的に見直し改善する
1.現状を把握する
最初のステップは、どこを標準化させるべきか検討するための調査です。
現状の業務フローからタスクを細かく洗い出し、どの業務に時間がかかっているのか、誰がどのような作業に従事しているのかを調べましょう。
業務の目的や他部署との連携状況、顧客への影響などを整理して、どのような成果物を誰に提供しているのかを明らかにします。
そのうえで、理想とする成果物の基準(標準化で目指す品質)を具体的に洗い出し、現場で抱えている課題や気がかりな点などもリストアップしましょう。
2.業務フローを可視化する
業務フローを可視化し、誰が何をすべきかを見える形にしましょう。
手順1で洗い出した情報をもとにフローチャートまたは業務マップを作成し、担当者や関連部署のつながりを整理します。
特に注意したいのが、部署をまたぐ業務や複数人で行う業務です。
フローチャート等で全員が業務全体を見渡せるよう工夫してください。
可視化によって「誰が何をすべきか」や「どの段階で確認が必要か」が標準化されるため、スムーズに業務を進める基盤づくりができます。
3.マニュアルを作成する
可視化したフローをベースに、各工程の手順を標準化するマニュアルを作成すると、業務の進め方が誰にとってもわかりやすくなります。
マニュアル作成時は、次の2点を明確にしておきましょう。
- マニュアルの目的
- マニュアルの対象者
たとえば、「○○の作業手順を確認するためのマニュアル」というように、目的をはっきりさせます。
また、マニュアルの対象者に合わせた内容や形式を検討することも重要です。
読み手が新人であれば、業務遂行に必要な前提知識からマニュアルを組まなければなりません。
文字だけでなく、画像や動画などの視覚的な要素も取り入れ、初めて作業する人でも理解しやすいマニュアルの作成を目指しましょう。
4.定型業務の自動化を検討する
業務の自動化は、品質とスピードを安定させる手段としても非常に有効です。
単純作業や入力が多い業務に関しては、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)など、ツールの導入を検討しましょう。
標準化された手順を機械的に実行することで、単純ミスを減らしながら作業時間を大幅に削減できます。
特に、請求書処理や在庫管理など、日々繰り返し発生する業務の自動化がおすすめです。
空いた時間を有効活用でき、従業員はより付加価値の高い業務に注力しやすくなります。
関連記事:RPAを活用した業務効率化とは?企業や地方自治体の成功事例も紹介
関連記事:DXが業務効率化に繋がる3つの理由!メリットや具体的な進め方も解説
5.定期的に見直し改善する
業務標準化は導入したら終わりではありません。
組織の拡大や環境の変化に合わせて、定期的に見直し・改善することが重要です。
定期的に現場からのフィードバックを収集し、マニュアルや業務フローの更新を行います。
これにより、常に最適化された状態が現場に行き渡り、従業員がスムーズに業務を進められるでしょう。
業務標準化の事例3選
ここからは実際に業務標準化に取り組み、成果を上げた次の3つの事例を紹介します。
- 事例1:株式会社カスミ他|容器整理ルールを決め、作業時間を大幅に削減
- 事例2:F-LINEプロジェクト|納品伝票を標準化し、検品作業効率アップ
- 事例3:神奈川県小田原市|定型業務の自動化により、生産性向上
事例1:株式会社カスミ他|容器整理方法の標準化により年間35,113時間削減
株式会社カスミは、容器整理方法を標準化することで年間35,113時間を削減しました。
背景には、納入された商品の容器に統一ルールがないまま乱雑に置かれ、配送ドライバーが整理に多大な時間を割き、休憩もままならない状況がありました。
こうした問題を解決するため、従来は74種類あった専用容器を独自の統一容器へ段階的に切り替え、積み方も見直すなどの標準化を実施しています。
その結果、1車両あたり1日72分かかっていた整理作業を35分に短縮することに成功。
年間トータルでは35,113時間も削減し、業務効率化につながりました。
参考記事:国土交通省 総合政策局 物流政策課|標準化による物流の生産性向上の事例集
事例2:F-LINEプロジェクト:納品伝票の標準化による効率化
味の素株式会社をはじめとする食品メーカー6社は、物流の効率と安定を目的に、「食品企業物流プラットフォーム(F-LINE)を構築し、共同配送や物流技術の活用に取り組んでいます。
従来、納品に用いられる伝票はメーカーごとに形式が異なっていたため、伝票ごとにプリンタを切り替える必要があり、事務処理が煩雑化していました。
そこで、印字位置や文字サイズ、複写枚数など納品伝票の規格を標準化しました。
さらに、各社の物流部門と営業部門が共同配送ルールや納品手順を共有することで、作業の効率化を図っています。
標準化された伝票により、検品作業の負担は大幅に軽減し、複数メーカーの商品を納品先ごとにまとめて届ける共同配送の取り組みにも役立っています。
参考記事:国土交通省 総合政策局 物流政策課|標準化による物流の生産性向上の事例集
事例3: 神奈川県小田原市|各課の勤務状況把握を自動化し年間462時間分の工数削減
神奈川県小田原市では、全81課にわたる共通の事務作業の一部を標準化しました。
従来、各課ごとの超過勤務時間や年休取得状況など、勤務状況の確認は庶務事務システムで個別に検索し、整理して管理者へメール送信する人的作業でした。
これらの定型的な業務のうち、各課のデータの抽出とメール添付・送信をRPAにより自動化。
その結果、RPA導入前と比較し、年間462時間分の工数の圧縮を実現し、人的作業ミスの削減にもつながっています。
業務標準化によって、職員はより付加価値の高い業務や住民サービスの充実に時間を回せるようになりました。
業務標準化を効率よく進めるために
業務標準化は、生産性向上と従業員の負担軽減を実現し、働きやすい環境を作る重要な取り組みです。
この記事で紹介した手法や事例を参考に、自社の業務改善に役立ててください。
ノムラシステムでは、業務の標準化推進やRPA導入の支援を行っています。
業務改善にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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