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失敗しないためのFit to Standardの進め方とは?
すでに導入したシステムまたは導入予定のシステムに、既存の業務を合わせることをFit to Standardといいます。
このアプローチは、導入コストや運用コストを抑えるだけでなく、業務プロセスを標準化することで生産性を向上させる考え方です。
Fit to Standardの概要や進め方、注意点などについて解説するため、新しく自社へシステムを導入する際の担当者は、ぜひ参考にしてください。
Fit to Standardとはシステムへ業務を合わせること
Fit to Standardの概要や目的、似た用語との違いについて、下記の内容を解説します。
- Fit to Standardの概要と目的
- Fit to StandardとFit&Gapの違い
Fit to Standardの概要と目的
Fit to Standardとは、既存の業務内容や業務フローを、自社へ導入するシステムの要件に合わせることです。
あくまで業務を新しいシステムへ合わせるため、システム自体をカスタマイズしたりアドオン開発したりしません。
Fit to Standardを行う目的には下記があります。
- システム導入の手間や費用をおさえるため
- 新しいシステムを自社に定着させるため
- 属人化を防ぎサービス品質のばらつきを防ぐため
通常ならばある程度システムをカスタマイズして導入する場合もあるでしょう。
しかし、カスタマイズしたり開発したりするためには時間とコストが発生します。
そこで、導入するシステムはカスタマイズせず、既存の業務を新しいシステムに合わせる考え方がFit to Standardです。
Fit to StandardとFit&Gapの違い | 製品ベースか業務ベースか
Fit to Standardと似た用語に、Fit&Gapがあります。
Fit&Gapとは、新しいシステムを導入する際に、自社が求める要件とシステムの機能を比較して適合度を分析する手法です。
自社に適した製品を見つけやすく、成功すれば製品の費用対効果が得られやすいでしょう。
Fit&Gapにより選定した製品は、既存の業務とのギャップを埋めるよう必要に応じてカスタマイズされることが多いです。
Fit to Standardは製品を既存のまま導入し、業務をシステムに合わせる、製品ベースの考え方です。
一方、Fit&Gapは、製品を既存の業務のためにある程度カスタマイズしてから導入するため、業務ベースである点が異なります。
Fit&Gapについては下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:Fit&Gap(フィット&ギャップ)とは?システム選定が成功する方法
Fit to Standardのメリットとデメリット
Fit to Standardのメリットとデメリットは下記のとおりです。
メリット | ・新しいシステムの標準機能を最大限活用できる ・最新機能を兼ね備えたシステムを導入できる ・常に最新バージョンを保ちやすい ・短期間・低コストでシステムを導入できる |
デメリット | ・既存の業務プロセスの見直しが必要 ・従業員にとって新しい業務プロセスを定着化させるための負担が大きい |
Fit to Standardは、新しく導入するシステムをカスタマイズせず、既存の業務自体に変更を加えます。
そのため、コストに関しては初期費用とランニングコストのみ考慮すればよく、開発費用などはほとんど発生しません。
ただし、業務によっては内容やフローが大きく変更される場合があるため、従業員にとって大きな負担となる可能性があるでしょう。
現場からすると、慣れ親しんだ既存システムから移行し、新しいシステムに合わせて業務プロセスを変えるというのは受け入れ難いことも多々あります。
Fit to Standardの進め方
Fit to Standardでは、おもに下記の3つの工程に沿って進めていきます。
- 新しいシステムの機能を把握する
- 既存の業務とフローを洗い出す
- システムの標準機能に業務を合わせる
新しいシステムの機能を把握する
既存の業務を新しいシステムへ合わせるためには、はじめにシステムが持つ標準機能を把握する必要があります。
下記の手順に沿って、新しいシステムの標準機能を把握したうえで、理想とする業務フローを作成しましょう。
- マニュアルを読む
- 前システムに備わっていた機能と備わっていなかった機能を把握する
- 新しいシステム導入後の、理想の業務フローを作成する
Fit to Standardでは業務プロセスを一気に見直すこともあるため、はじめにシステム理解が重要となります。
既存の業務とフローを洗い出す
さらに、新システム導入後のフローと既存の業務フローを比較します。
比較する目的は、新システム導入後のフローと既存の業務フローとで、どれだけの差が生じるかを把握するためです。
下記の手順に沿ってフローを比較しましょう。
- 既存業務の手順を書きだす
- 新しいシステム導入後の、理想の業務フローと比較する
- 新しいシステムでカバーしきれない業務をまとめておく
どうしても既存の業務フローとは大きくかけ離れており、従業員への負担が大きくなったり業務進行が不可能になったりすることもあるでしょう。
課題や問題があると思われる業務フローの取り扱い方については、当記事の後半で解説します。
システムの標準機能に業務を合わせる
システムの標準機能に、業務を合わせます。
- 新システム導入後のフローを従業員へ周知する
- 新システム導入後のフローをテスト的に一部の従業員のみで行う
- 新システムを本格導入する
新システム導入後は業務プロセスの変更を伴うことが多いため、はじめから広い範囲かつ多くの従業員で実行させると、混乱が生じやすくなります。
そのため、狭い範囲や少人数による従業員のみで、テスト的・段階的に導入するのがおすすめです。
失敗しないためのFit to Standardの注意点
Fit to Standardは、導入するシステムの規模が大きいほどトラブルが生じやすく、スムーズに進まない可能性が高いです。
Fit to Standardを適切に進めるため、下記のような注意点について把握します。
- 業務担当者の負担を考慮する
- 新しいシステムで対応できない業務の対策を考える
業務担当者の負担を考慮する
Fit to Standardで新しいシステムを導入した後、担当者には下記のような負担が考えられます。
- フローを把握すること
- フローを従業員へ定着化させること
- フロー定着化に伴う、従業員からの不満への対応
担当者の負担を放置すると、新しいシステムに対する満足度が下がり費用対効果を感じられなくなったり、発生した問題を見逃したりする可能性があります。
そこで、下記のような対策を施し、業務担当者へかかる負担をできるだけ軽減させましょう。
- 新システム導入後のフローをできるだけシンプルにする
- 省略しても問題ない業務を省く
新しいシステムで対応できない業務の対策を考える
新システム導入により、既存の業務がスムーズに進まなかったり、対応不可になったりすることもあるでしょう。
問題・課題が発生した業務については、下記の方法で対策します。
- 新しくツールを導入して、これまで通り業務を進める
- 製品をカスタマイズして、これまで通り業務を進める
- 業務自体を無くす
新システムにより対応が難しくなった業務は、引き続き進めるためにシステム自体をカスタマイズしたり新しいシステムを導入したりする必要があります。
しかしFit to Standardを行う目的は、システムをカスタマイズせず費用をおさえつつ導入することです。
そのため、どうしても進めなければならない業務を除いては、業務自体を無くすことも検討しましょう。
Fit to Standardで新システムのスムーズな導入を
Fit to Standardは、システムが持つ標準機能に対して、既存の業務を合わせることです。
Fit to Standardなら、システムをカスタマイズするコストが発生しないメリットがあります。
一方で、業務内容の見直しにおいて手間が発生したり浸透するまでに時間がかかったりするため、デメリットに注意が必要です。
Fit to Standardをスムーズに進めるなら、システムの専門知識を持ったベンダーやコンサルタントの協力が不可欠です。
ノムラシステムコーポレーションでは、ERPコンサルティングサービスを提供しております。
ERPの導入に先立ち、まずは貴社の課題や疑問をぜひお聞かせください。