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DXリテラシーとは?意味を詳しく解説!DXリテラシーを高めるための4つのステップやDX推進事例も紹介
DXを成功させるには、関わるメンバーのDXリテラシー向上が欠かせません。
この記事では、DXリテラシーの基本解説を行い、DXリテラシーを高めることで成功した事例もあわせて紹介します。
自社の非効率な業務や競争力低下といった問題に頭を悩ませている方は、ぜひ参考にしてみてください。
DXリテラシーとはDXを理解して活用できる能力のこと
DXリテラシーとは、DXを正しく理解し活用できる能力のことです。
DXリテラシーの構成要素は、2022年3月に経済産業省によって策定された「DXリテラシー標準」において、次図のようにまとめられています。
DXを成功させるためにまず重要になるのが、自社でDXを行う必要性の理解と、自社に適したマインドの習得です。
DXで目指すべき方向がわからないと、組織の人材が自発的に行動できません。
マインドを学んだ上で、AIやクラウドなど自社のDXで活用される技術の知識を身につけツールなどで活用していくことが、DXリテラシーを身につける上でのポイントです。
DX推進の土台となる7つのマインド・スタンス
DXの推進には「マインド・スタンス」の理解が重要です。
「マインド・スタンス」は、DXを理解し適切に推進するための土台となり、働き手一人ひとりが持つべき意識・姿勢・行動指針となります。
「マインド・スタンス」は、次の7つに分類されます。
1. 変化への適応
2. コラボレーション
3. 顧客・ユーザーへの共感
4. 常識にとらわれない発想
5. 反復的なアプローチ
6. 柔軟な意思決定
7. 事実に基づく判断
それぞれ解説します。
1. 変化への適応
DXを成功させるには、環境の変化に迅速かつ柔軟に対応する能力が非常に重要です。
ここで述べる「変化への適応」とは、テレワークの導入をはじめとする「働き方の変化」や、「消費者の購買行動の変化」に適応することを指します。
過去、情報の流れや購買行動は、テクノロジーの進歩によって劇的に変化してきました。
たとえば、インターネットが普及する以前、人々は主に雑誌やテレビなど、限られた媒体を通じて情報を得ていました。
しかし、インターネットの登場によってこの構図は一変し、現在ではデジタル広告やECサイトからも商品情報を得られるようになったのです。
そのため、消費者の購買行動にも「オンライン」という選択肢が加わるようになりました。
このような時代の変化に適応できない企業は、顧客のニーズに応えられず、競争優位性を失ってしまう可能性が高いです。
そのため、こうした時代の変化に柔軟に対応する能力は、企業が今後も成長し続けるために不可欠な要素と言えます。
2. コラボレーション
DX推進は個々のスキルだけでなく、多種多様な専門性を持つ人同士で協力し合う「コラボレーション」が必要です。
たとえば、製造関連企業でDXする場合、IT部門だけでDXは完遂できません。
なぜならIT部門は、DXに必要となる製造現場での部品管理やオペレーションなどの知見を持っていないからです。
そのため、IT部門だけでは現場の状況や課題を反映した適切なシステム・技術の導入ができず、DXは実現できなくなるでしょう。
IT部門が製造における専門知識を持つ生産現場の人と協業することで初めて、適切な業務プロセスの改革が可能になります。
3. 顧客・ユーザーへの共感
企業がDXを成功させるには、単に技術を導入するだけでは不十分です。
必要なのは、顧客の立場に立って考え、潜在ニーズに応えることです。
この「潜在ニーズ」とは、顧客自身が自覚していない要求や期待を指します。
潜在ニーズを顕在化させるためには、顧客との対話やデータに基づいた分析が欠かせません。
具体的には、インタビューやアンケートなどを活用し、顧客がどのようなことを考えどのような感情を抱いているのかを詳細に把握する必要があります。
こうした情報をもとに、顧客のニーズに応えるために最適な技術やシステムを選定し、導入を進めていくことが重要です。
また、顧客ニーズの解明には、企業内での部門間の連携やデータの共有が不可欠です。
こうした組織的なアプローチがあれば、DXの取り組みはより効果的なものとなるでしょう。
4.常識にとらわれない発想
DXにおいて、既存の考え方に縛られず、新しい視点で物事を捉える姿勢も必要です。
たとえば出版業界において、書籍は長らく紙媒体が主流でしたが、近年ではスマートフォンやタブレットの普及により、多くの書籍が「電子書籍」として販売されるようになっています。
電子書籍の普及は、印刷費や物流費といった紙媒体特有のコストを削減するだけでなく、これまでアクセスが難しかった市場や顧客層に対して書籍を届けるチャンスを大幅に広げました。
地理的制約を超えた販売が可能となり、さらには24時間365日購入できるという利便性によって、顧客体験を向上させています。
このように、デジタル技術の進化という時代の変化に伴い、従来の常識にとらわれない発想を持つことで新たな価値を生み出せるのです。
5.反復的なアプローチ
DXは、一度決めたやり方に固執せず、仮説・実行・改善を繰り返すことが大切です。
たとえば、銀行の窓口業務効率化でタブレットを導入する場合、最初から全支店に導入するとリスクが大きいため、まず一つの支店で導入し、ユーザーの評価を基に問題点の特定と改善を繰り返します。
そうすることで、リスクを抑えつつ全支店への導入に移行することができ、全体的な業務効率化を推進できるのです。
変化が激しい現代には、失敗を許容できる小さいサイクルで反復的に新しい取り組みを実施する姿勢が求められます。
6.柔軟な意思決定
DXを成功に導くためには、周囲の環境変化が激しい状況においても、前提条件にとらわれず柔軟に判断を下すことが重要です。
近年の環境変化が激しい要因として、新しいテクノロジーの登場やグローバル化、感染症の流行等多くの外部要因があげられます。
このような変化に迅速に対応できない企業は、顧客ニーズや市場動向の変化に乗り遅れ、競争力を失う恐れがあるでしょう。
周囲の変化が激しい状況下で柔軟に意思決定を行うには、データを積極的に活用する姿勢や、データ分析を基にした長期視点での戦略設計が必要です。
また、既存の価値観を基にした判断が困難な状況で意思決定するためにも、組織内でのコミュニケーション強化や失敗を恐れない文化の醸成といった姿勢も大切になります。
7.事実に基づく判断
DX推進において、事実に基づいた判断も重要な要素の一つです。
事実に基づく判断は、組織全体のDXリテラシー向上に加え、データ収集基盤の構築やデータ分析による事実の可視化などが効果的です。
これらを実施することで意思決定の精度が上がり、状況の変化に素早く対応できるようになります。
たとえば小売業であれば、オンラインとオフラインの両データを統合し、顧客ごとの行動パターンを分析することで、個別化されたレコメンデーションやプロモーションの実施が可能です。
これにより、顧客満足度と売り上げの向上につながるでしょう。
このように、客観的な事実に基づいて判断することで、さまざまな恩恵を受けられます。
DXリテラシーとして身につけるべき3つの知識
「DXリテラシー標準」では、DXリテラシーとして身につけるべき3つの知識として、次の3つの項目をあげています。
- DXの背景
- DXで活用されるデータ・技術
- データ・技術の活用
それぞれ解説していきます。
1. DXの背景
DXの背景として社会・顧客価値・競争環境の変化があげられており、これらの変化は働き手一人ひとりにDXリテラシーが必要な理由でもあります。
社会環境を例にあげると、近年では地球温暖化の経済活動への影響が懸念され、社内の温室効果ガス排出量削減等の脱炭素経営が求められるようになってきています。
このような変化状況下では、デジタル技術で生産プロセスや設備稼働を効率化することで、エネルギー消費量の削減や温室効果ガスの排出量削減が可能になるため、DXは有効な手段であるといえます。
2.DXで活用されるデータ・技術
DXで活用されるデータやデジタル技術も、身につけるべきDXリテラシーの一つです。
データを正確に理解するためにも、数字以外の形式も知っておきましょう。
加えて、データ分析についても、重回帰分析やクラスター分析といった多変量解析等の基本的な手法は理解しておくとよいでしょう。
また、DXで活用される技術の内容も理解しておきましょう。
たとえば、DXでしばしば導入されるクラウドは、オンプレミスに比べてシステムの運用保守の負荷や導入コストが削減できます。
データやデジタル技術についての基礎的な理解をすることで、実際に活用するための土台が整います。
3.データ・技術の活用
データの分析手法やツール等を用いた技術の活用方法を知るだけでなく、DXにより意図せず個人情報を流出させないためにも、セキュリティやモラルなどに意識を配ることが大切です。
たとえば、DX推進に伴いインターネット接続を前提とするクラウドを導入する場合、社内ネットワークでの使用を前提としているオンプレミスに比べ、サイバー攻撃の標的になる可能性が高まります。
DX推進には、注意点を理解しデータや技術を活用できることが重要です。
社員のDXリテラシーを高めるための4ステップ
DX推進には、社員のDXリテラシー向上が欠かせません。
社員のDXリテラシーを向上させる具体的な方法は次表の通りです。
ステップ | 目的 | 社員への具体的アクション |
1 | DXの必要性の理解 | 社内の業務プロセスや文化における課題の共有 |
2 | DXに必要なマインド形成 | DXに必要なマインドの特定と浸透 |
3 | DXに必要な知識の習得 | DXで活用するデータや技術を効率的に学習できる環境の整備 |
4 | DXに向けた自発的な行動 | 習得した知識をアウトプットできるツールの整備 |
上記の4ステップを参考に社員のDXリテラシーを向上させ、DXを成功させましょう。
DXリテラシーを高めることで成功したDX推進事例を紹介
キリンホールディングスは、2021年より社員のDXリテラシーおよびスキル向上を目的とした「DX道場」を開講しました。
DXの必要性を理解しデジタル技術を用いた課題解決策の考案を目的とした初級講義から、業務効率化や価値創造の推進を目的とした高度な講座まで提供し、DX推進を先導できる人材育成を目的としたプログラムです。
この中の成功事例が「自動販売機ビジネス」であり、同社は、自動販売機の管理業務を熟練した担当者の経験に基づき実施していました。
そのため、担当者により判断がばらつき、品切れや廃棄ロスなどの課題が発生していたのです。
この課題に対し、営業部の人材がDX道場にてデジタルスキルを身につけた上で、ソフトバンク社や自社のICT戦略部を巻き込み、多様な専門性を掛け合わせて課題解決に取り組みました。
自動販売機の販売データなどを学習・分析し、オペレーションを最適化するAIを用いたサービス「Vendy」を自動販売機の管理業務に導入し、業務プロセス改革に成功しています。
結果、自動販売機管理業務の業務時間約1割の削減および、約5%の売り上げ増を見込んでいます。
参考記事:価値創造を加速するICT | 組織能力 | キリンホールディングス
DX推進にはノムラシステムのDXコンサルティングがおすすめ
DX推進の第一歩として、社員のDXリテラシー向上が必要です。
ただし、成果が出るには時間がかかるため、効率よくDXを成功させたい場合はDXコンサルティングがおすすめです。
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現状分析に基づき適切な目標と課題を設定し、業務・システムの両面から解決策を提示します。
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