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経産省DXレポートの「2025年の崖」とは?問題点や対策をわかりやすく解説
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日本企業が直面する「2025年の崖」とは、レガシーシステムの維持やIT人材不足による経済損失を引き起こす危機のことを指します。
本記事では、2025年の崖の問題点や対策についてわかりやすく解説。
2025年の崖が何を意味するのか、どのような問題があるのかを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
経済産業省DXレポートの「2025年の崖」とは?
「2025年の崖」という言葉は、経済産業省が2018年に発表したDXレポート(以下、2018年DXレポート)で初めて使われました。
2018年DXレポートでは、企業のDX化を阻害している要因として、既存システム(レガシーシステム)の複雑化・老朽化・ブラックボックス化が挙げられています。
このような既存システムが残る場合、2025年以降に予想されるIT人材の引退やサポート終了による経済損失は、最大で年間12兆円にのぼる可能性があるとされています。
この発表を契機に、2025年までに既存システムを刷新し、DXを推進する必要性が広く認識されるようになりました。
DXレポート「2025年の崖」その後の状況
2018年DXレポート発表後、DXに取り組む企業は増加していますが、従業員規模によって推進状況に差が見られます。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表した「DX動向2024」によると、2023年度に「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」と回答した企業は37.5%でした。
この値は2021年度の21.7%から増加しており、DXが着実に推進されていることがわかります。
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出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2024」p.2
従業員数別に推進状況を見ると、従業員1,001人以上の大企業では96.6%がDXに取り組む一方で、100人以下の中小企業では44.7%にとどまり、DX推進が遅れています。
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出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2024」p.2
小規模企業においては、DXを推進するための人材が不足しているのが現状です。
その結果、戦略の立案や実行ができず、デジタル化の波に乗り遅れてしまいます。
DX化は国内全体として進んでいるものの、企業規模による格差が依然として課題です。
「2025年の崖」の問題点をわかりやすく説明
2018年DXレポートによれば、2025年の崖のシナリオは、大きく分けて以下3つの側面から起こります。
- 技術面
- 人材面
- 経営面
それぞれ2025年においてどのような課題を抱えているのか、詳しく説明します。
技術面:レガシーシステムに起因するトラブルリスク
レガシーシステムとは、技術面での老朽化・肥大化・複雑化、またブラックボックス化などの問題を抱えているシステムのことをいいます。
老朽化したシステムは、新しい技術との互換性が低いため、DXを進める上での障害のひとつです。
2018年DXレポートでも、レガシーシステムに起因するトラブルリスクが今後増加し、経済損失を引き起こすことが懸念されています。
また2025年は、SAPをはじめとする主要なERP(基幹システム)のサポート期限とされていました。
この「2025年問題」は、昨今のIT業界ではSAPサポート対応期限の切り替わりにより「2027年問題」とも呼ばれています。
つまり技術面における「2025年の崖」とは、2025年または2027年までに、DXを進める上で既存システムの見直しが不可欠ということです。
関連記事:SAPがサポート終了!2025年(2027年)問題と対応方法を紹介
人材面:技術者リタイアによるIT人材不足
人材面における「2025年の崖」とは、2025年以降に予想される人材不足の懸念です。
2018年DXレポートによれば、IT人材不足が43万人にまで拡大すると予想されています。
また、今後レガシーシステムの仕様を把握している技術者の退職が進み、古いプログラミング言語を知る人材の供給不足も深刻化する見込みです。
さらに、この人材不足の問題は、少子高齢化が引き起こす「2030年問題」とも関連しています。
2025年以降も労働人口の減少が加速する中で、DXを進めるためには先端IT人材の確保と育成が欠かせません。
経営面:DXへ向けた経営改革の課題
2025年までのDXにおける経営面の課題とされている点は、主に以下の3つです。
- データを活用しきれずDXの実現不可
- システム維持費の高額化
- 保守運用者不足によるシステムトラブルリスクの増加
これらは人材面・技術面の課題とも密接な関わりがあります。
たとえば、システム維持費の高額化はレガシーシステムの典型的なデメリットですし、保守運用者不足は人材面の課題です。
また、経営層がDX推進を図ろうとしても、業務プロセス自体の見直しが求められ、現場での反発を招くことも少なくありません。
DXへ向けた経営改革が容易ではない中、この経営面の課題を克服できない場合、2025年以降、最大12兆円の経済損失が生じる可能性が示唆されています。
「2025年の崖」の影響
2025年の崖の影響は、ユーザ企業とベンダー企業の両方にリスクをもたらします。
たとえば、レガシーシステム刷新やデータ活用ができないことで、ユーザ企業はDXを実現できず、デジタル競争での優位性を失いかねません。
技術的負債が蓄積することで、必要なIT投資が制限され、さらに競争力を損なうリスクもあるでしょう。
一方、ベンダー企業は既存システムの運用・保守にリソースを割かざるを得ず、人月商売の受託型業務・多重下請構造から抜け出せないリスクが予想されます。
「2025年の崖」を乗り越える対策とは
2025年の崖の対策には、以下が挙げられます。
- DX推進指標を活用
- レガシーシステムの刷新
- 新たなデジタル技術の活用
- 人材の育成・採用
DX推進指標を活用
企業として2025年の崖に向き合うには、まずは経済産業省が提供している「DX推進指標」の活用をおすすめします。
DX推進指標とは、自社のDX推進状況を自己診断するためのものです。
DXに関して、経営層やIT関係者が認識を共有し、具体的なアクションプランを作成するのに役立ちます。
DX自己診断により、社内の問題点やDXの移行状況を明らかにでき、IT戦略やシステム環境構築のための人材育成、また導入するシステムの選定ができるようになるでしょう。
レガシーシステムの刷新
保守・運用に膨大なコストがかかっているレガシーシステムを刷新することが、2025年の崖を克服する上で重要です。
2018年DXレポートでは、レガシーシステム刷新のための指針として「DX推進システムガイドライン」が策定されているため、ぜひ確認してください。
システム選定の方法としては、既存業務とシステムのギャップを分析する「Fit&Gap」などがあります。
また、システムの標準機能に業務をあわせる「Fit to Standard」は、短期間でシステム導入を実現でき、昨今注目を集めるアプローチです。
基幹システムの刷新は、莫大なコストや時間、またリスクも伴うため、慎重かつ迅速な導入が求められます。
製品選定にお悩みの方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:Fit to Standardとは?
新たなデジタル技術の活用
2025年の崖をDX化で乗り越えるには、新たなデジタル技術の導入が欠かせません。
デジタル化により、業務プロセスの効率化や標準化が進むためです。
新しい技術を導入する上で活用できるシステムとしてERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)があります。
ERPは、企業の経営資源を一元管理し、業務の効率化や最適化を可能にするシステムです。
ERPなど新しい技術を取り入れる際には、専門知識を持ったベンダーやコンサルタントに協力してもらうのがよいでしょう。
ノムラシステムコーポレーションでは、「SAP ERPコンサルティング」を提供しています。
関連記事:ERPとは?システムの選び方から導入の流れ、ERP成功事例も紹介
人材の育成・採用
2025年の崖を乗り越えるためには、DXに対応できる人材を確保・育成することが重要です。
DX人材には、AI、IoT、ビッグデータなどのデジタル技術に関する知識を持ち、それらを業務に応用できる能力が求められます。
具体的な人材育成の施策としては、DX推進に必要なスキルを持つ人材を積極的に採用し、社内での座学やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を通じてスキルを習得させることなどが効果的です。
人材育成には「育成計画書」を立てることも有効ですので、以下の記事もぜひ参考にしてください。
関連記事:求める人材が育つ人材育成計画の作り方|計画の立て方や計画書のテンプレートも紹介
企業が「2025年の崖」を超えDXを実現するために意識すべきこと
本記事で紹介した「2025年の崖」とは、2025年以降、レガシーシステムの老朽化や、保守・運用を担う人材の不足により、経済損失が生じるリスクを指します。
この損失を避けるためには、DXを推進し、レガシーシステムを刷新することやIT人材を確保・育成することが不可欠です。
効率よくDXを成功させたい場合は、DXコンサルティングの利用がおすすめです。
ノムラシステムのDXコンサルティングは、知識やノウハウを持ったコンサルタントがDX推進をサポートします。
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